2010/09/22 手形培地で細菌検査
先日の公開講座の際に、手形培地を使った細菌検査を行いました。手形培地は、手の形に作られた寒天培地(下の写真)で、手の平を培地に押し当ててから培養します。
(1)洗浄する前、(2)水道水で洗浄後、(3)石鹸で洗浄後という3段階で、手の平を検査すると、洗浄(手洗い)によりどの程度細菌が除去できるかわかります。手形培地を一晩培養すると、下の写真のように細菌が増殖し、コロニー(細菌の塊)が形成されます。
上の写真のように、洗浄により細菌数が減っていけばよいのですが、実はなかなかこのような結果は得られません。毎年、学生実習でも、この種の実験を行っていますが、学生諸君の予想に反して、手洗いをしてもあまり菌数が減らなかったり、逆に菌数が増えてしまったりする場合が多いのです。下の写真のような結果は、一見奇異な感じがしますが、よくあることです。
このように石鹸を使って洗浄しても菌数がほとんど減らないのは、皮膚の常在菌がかなり強く皮膚に付着していることも、一因と推察されます。アルコールなどで消毒すれば、菌はほとんど検出されなくなります。一旦消毒した後に手を汚した場合は、洗浄によりかなりよく菌を除去することもできます。このような実験結果が、滋賀県のホームページにも掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。
手形培地を使った実験だけでは、残念ながら検出される細菌の種類まではわかりません。したがって、菌数が多いからといって、それが有害菌であるかどうかはわからないので、ただちに心配する必要もありません。なお、細菌の種類によっては、下の写真のように、非常に特徴的なコロニーを形成するものもあります。白く大きなコロニーは、納豆菌(Bacillus natto)のものと考えられます。朝食や昼食に納豆を食べた方では、たいていこの菌のコロニーがたくさん検出されます。