2010/6/4 研究のキーワード(1)ペプチド
この連載「研究のキーワード」では、食品機能安全学研究室で手がけている研究テーマに関連するキーワードを取り上げ、わかりやすく解説します。キーワードを通して、私たちの研究内容や意義について理解していただければ幸いです。連載初回は、「ペプチド」です。
ペプチドは、アミノ酸が数個から数十個つながった物質です。アミノ酸を結合させるとペプチドができますが、タンパク質を分解することによってもペプチドが生成します。
ペプチドの性質は、構成されるアミノ酸の種類だけでなく、その配列順序も重要です。ある生化学の教科書には、「グリシン-リジン-アラニンというペプチドは、アラニン-リジン-グリシンとは全く別のものであり、化学的にも異なる意味をもっている。これは“Talk little, do much(無言実行)”という標語が、順序を変えると“Do little, talk much(有言無行)”のように全く異なる意味になるのと同じである。」と書かれています。
私たち人間をはじめとする生物の体の中には、様々なペプチドが存在します。たとえば、インスリンなどのホルモンの多くもペプチドです。医薬品に使用されている抗生物質にも、微生物が産生するペプチドがあります。変わったところでは、ヘビ、ハチ、サソリといった生物の毒にも強い毒性を有するペプチドが含まれています。毒蛇から発見されたペプチドは、血圧降下剤(医薬品)の開発にもつながっています。
私たちの研究室が対象としているペプチドは、主に食品タンパク質の分解により生成するものです。乳・肉・卵といった畜産食品は、良質なタンパク質を豊富に含むことが大きな特徴です。このようなタンパク質を酵素や微生物で分解すると、様々なペプチドが生成します。これまでに私たちは、血圧降下ペプチド、抗酸化ペプチド、抗ストレスペプチド、抗疲労ペプチド、ビフィズス菌増殖促進ペプチドなどを発見してきました。研究成果の一部は、すでに実際の食品やペットフードにも利用されています。また、最近では、ペプチドの「味」にも注目し、食品やペットフードの嗜好性を高めるための研究も進めています。
なお、ペプチドについては、以下の「フード・ペプタイドトピックス」でも解説していますので、こちらもぜひご覧ください。