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2011/10/06 『農学・生命科学のための学術情報リテラシー』(本の紹介16)

今回紹介するのは、『農学・生命科学のための学術情報リテラシー』(齋藤忠夫編著, 朝倉書店, \2940, 2011/9)です。「リテラシー」という言葉はよく使われるようになりましたが、書名としてはちょっと抵抗も感じました。「文献検索」や「情報活用」などだと、垢抜けない感じでしょうか。書名はともかくとして、本書は大学院生など若手研究者にとって有用な内容が盛り込まれています。



現在の学術情報環境は、私(有原)が大学院生だった1980年代前半から激変しました。インターネットの普及は、研究者の情報収集法を大きく変え、文献検索の労苦から開放してくれました。ただ、容易に情報が得られるようになった一方で、ネットから得にくい書籍などの情報を軽視するようになったことも否めません。本書などにより、文献検索の本質的な重要性を認識しておくことは大切だと思います。

第1章「学術情報リテラシーと図書館」、第2章「インターネットを用いた情報検索方法」に続いて設けられている第3章「農学・生命科学分野での文献検索の実際」が本書の中心部分となっています。農学・生命科学分野を、「食品科学分野」、「水産科学分野」、「農業経済学分野」、「有機化学分野」、「植物科学分野」、「微生物学分野」に分け、それぞれの領域のエキスパートが文献検索法について記述しています。このような形は、これまでの類書には見られなかったもので、記述の重複も若干生じていますが痒いところに手が届く解説が評価されます。私の専門分野からは遠い「農業経済学分野」などの部分にも、新鮮な記述がありました。

最初、本書を手に取ったとき、132ページというボリュームの少なさが気になりましたが、通読してコンパクトにまとめられているメリットを感じました。また、随所に挿入されている編著者の齋藤忠夫教授(東北大学大学院農学研究科)による「コラム」も、本書の魅力を高めています。

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