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2011/10/27 『垂直農場』(本の紹介19)

今回紹介する本は、『垂直農場 明日の都市・環境・食料』(ディクソン・デポミエ著, 依田卓巳訳, NTT出版, \2730, 2011/9)です。書名と表紙だけに惹かれて入手した本でしたが、期待以上に興味深い内容でした。「垂直農業」(Vertical Farm)とは、この本の帯にもあるように「都市のビルを農場に変える」というものです。ニューヨークに132階建て(高さ600m)の垂直農場を建設するというニュースが、今年はじめにあったのを覚えている方もいるのではないでしょうか。



いわゆる植物工場はかなり昔からあった概念で、日本でもすでに多くの植物工場があります。しかし、限られた野菜類の生産が主で、本書の言う垂直農場のような規模の大きいものは見られません。垂直農場は、森林伐採、人口増加、気候変動、汚染、資源枯渇、生態系の崩壊、食糧不足、都市のヒートアイランド現象といった問題を、完璧に解決策すると述べられています。本書(目次は下記)では、垂直農場のメリットを強調し、あえてそのデメリットには触れなかったようですが、このような形の食糧生産に対して漠然とした不安も感じます。大地を使わない農業生産がもたらす様々な問題点も知りたいところです。なお、本書は翻訳書ですが、かなり読みやすい日本語になっています。随所に挿入されている上質紙を使ったカラーページ(写真やCGなどが多数)も、本書の魅力を高めています。

  • 第1章 自然を改造する
  • 第2章 昨日の農業
  • 第3章 今日の農業
  • 第4章 明日の農業
  • 第5章 垂直農場のメリット
  • 第6章 垂直農場の形態と機能
  • 第7章 垂直農場の社会的利益
  • 第8章 垂直農場のほかの利用方法
  • 第9章 未来の食料

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