2012/01/31 『科学嫌いが日本を滅ぼす』(本の紹介31)
今回紹介するのは、『科学嫌いが日本を滅ぼす 「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか』(竹内薫著, 新潮選書, \1155, 2011/12)という本です。副題にある「ネイチャー」と「サイエンス」が、本書の大きな特徴となっています。ご存知の方が多いと思いますが、「ネイチャー」は英国のNature誌、サイエンスは米国のScience誌のことで、科学雑誌の両雄とも言える存在です。これらの雑誌に論文を載せたいと思う科学者はとても多いのですが、審査は厳しく掲載率は7%程度とかなりの狭き門です。

商業誌であるネイチャーと学会誌であるサイエンスの違いなど、私も興味深く読むことができました。両誌の存在を通して、ノーベル賞の受賞対象となった研究など、科学史を眺めることもできます。著者のもともとの専門は物理学領域ですが、「DNA二重らせん」、「ES細胞」、「PCR法」、「粘菌」といった話題が多く、生命科学領域の読者にとって満足度が高い内容でしょう。本書では、ネイチャーとサイエンスをかなり詳しく解説していますが、「科学応援団」を自任する著者は、2大科学誌を通して日本の科学のあるべき姿を見い出すことを本書の目的としています。
以下に本書の目次をあげておきます。
- 第Ⅰ部 ネイチャーVS.サイエンス
- 第 1章 ネイチャーとサイエンスの創刊
- 第 2章 戦争と科学誌
- 第 3章 ネイチャーVS.サイエンス
- 第Ⅱ部 科学誌の事件簿
- 第 4章 二重らせんスキャンダル
- 第 5章 ES細胞スキャンダル
- 第 6章 マリス博士と「遺骨」真贋問題
- 第 7章 疑似科学というグレーゾーン
- 第Ⅲ部 日本の科学を考える
- 第 8章 「はやぶさ」で考える日英米の科学土壌
- 第 9章 科学における英語問題
- 第10章 ノーベル賞VS.イグ・ノーベル賞
- 第11章 原発事故と科学誌