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2012/05/18 『実況・料理生物学』(本の紹介45)

今回紹介するのは、『実況・料理生物学』(小倉明彦著, 大阪大学出版会, \1785, 2011/10)という本です。本書は、入学間もない文系・理系の混じった1年生を対象として大阪大学で開講されていた授業「料理生物学入門」(基礎セミナー)の内容です。本書に掲載されているシラバスには、「料理は科学実験である。・・・ごく身近な料理という作業を題材に、生物学を体感として理解する。・・・受講資格は初体験の食品もいとわずに口にできること、好き嫌いは別として、いちおう何でも食べられること、とする。」とあり、そのユニークな内容がうかがえます。調理が行なえる実習室がなくなったことと著者の所属研究室の移転により、5年間(2001~5)開講されたこの授業は終了してしまったとのことです。このような貴重な授業の内容が本として残されたのは、たいへんよかったと思います。「第5講 焼肉の生物学」に書かれている内容は、早速、私の授業(畜産物利用学など)でも活用させていただくつもりです。



著者の小倉明彦先生は、大阪大学大学院生命機能研究科(脳神経工学講座)の教授をされている方です。「あとがき」で、「こんないい加減な講義で授業料をとっていいのか、と叱られると、返す言葉がない。」と書かれていますが、なかなか素晴らしい講義で、私の理想とするところに近い講義内容に感じられました。非体系的な講義だったと述べられていますが、本書では各講末尾に3~4項目のしっかりとした「解説」が付けられており、学術的な理解ができるように工夫されています。「授業では、食材や商品について、ギャグや批評や裏話で盛り上がったりしていたのだが、活字にすると差しさわりがあるとの判断で、大部分をカットせざるをえなかったのが、少々残念である。」とありますが、このあたりは私もたいへん残念です。

以下に本書の目次をあげておきます。

  • 第0講 オリエンテーション
  • 「今年の顔触れはどうかな。」
  • 第1講 カレーライスの生物学
  • 「講義をはじめます。」
  • 第2講 ラーメンの生物学
  • 「今日のお昼は何を食べましたか。」
  • 第3講 ホットドッグの生物
  • 「勉強もちゃんとしてちょうだいね。」
  • 第4講 お茶はいかがの生物学
  • 「今週はライトに、お茶にします。」
  • 第5講 焼肉の生物学
  • 「今週は約束通りヘビーに焼肉です。」
  • 第6講 ちょいと一杯の生物学
  • 「今日はこのあとコンパという諸君も多いでしょう。」
  • 第7講 食後のデザートの生物学
  • 「暑くなってきましたね。」

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