2015/05/08 『人とミルクの1万年』(本の紹介143)
今回紹介するのは、『人とミルクの1万年』(平田昌弘著, 岩波ジュニア新書, \880, 2014/11)という本です。著者の平田先生は、帯広畜産大学の准教授をされています。本書によると、平田先生は、20代後半を青年海外協力隊員としてシリアで過ごしました。そのときにミルクを巧みに利用する乳文化に出会い、これをライフワークとすることにしたそうです。

本書は、「若い世代の良き話し相手」である岩波ジュニア新書の一冊ですが、幅広い読者が満足できる内容です。乳利用の歴史1万年がうまくまとめられていますが、これを通して乳・乳製品の科学的特性を理解することもできます。私(有原)がとくに注目したのは、7章の「ミルクを利用してこなかった人びと」です。きわめてユニークな観点から、乳利用の発達が論じられています。
以下に、本書の目次をあげておきます。
- 1章 動物のミルクは人類に何をもたらしたか
- 2章 人類はいつからミルクを利用してきたか
- 3章 ミルクの利用は西アジアの乾燥地で始まった
- 4章 都市文化がひらいた豊かな乳文化 -インドを中心に
- 5章 ミルクで酒をつくる -寒く、乾燥した地域での乳加工
- 6章 ヨーロッパで開花した熟成チーズ
- 7章 ミルクを利用してこなかった人びと
- 8章 乳文化の一万年をたどり直す