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2011/10/01 『畜産物利用学』(本の紹介14)

今回紹介する『畜産物利用学』(齋藤忠夫・根岸晴夫・八田一 編, 文永堂出版, \5040, 2011/10)は、大学生が使う教科書を念頭に置いて編集されたものです。「畜産物利用学」という学問領域は、一般の方にはちょっとピンと来ないところもあるようです。私(有原)が所属する研究室も、以前は「畜産物利用学」でしたが、よく「畜産物理用学」とか「畜産物理容学」などと書かれることがありました。乳・肉・卵といった畜産物(畜産食品)の科学と利用(製造・加工)を対象とするのが畜産物利用学です。



本書は、畜産物の基礎・科学的(サイエンス)部分を大学教員が、製造・加工的(テクノロジー)部分を企業技術者が分担執筆し、この分野の最新最良の教科書に仕上がっています。3名の編者の努力により、全体の構成がよく整えられ、細部にわたる記述の正確さが保たれている点も特筆に値します。また、大きな特徴として、全編カラー版となっていることもあげられます。美しい写真や図版により、学生諸君は畜産物に対する関心と理解を深めることができるでしょう。

「乳の科学(第1章)」、「肉の科学(第2章)」、「卵の科学(第3章)」に続いて、「最近のトピックスと諸問題」にかなりのページを割いている点も、本書の魅力を高めています。私も早速教科書として使用することにしましたが、乳・肉・卵に関する最新のハンドブックとしても、企業、行政、大学などに所属する関係者に役立つ書籍でしょう。

  • ご参考までに、本書の目次を以下に載せておきます。

    • 第1章 乳の科学
    • 1.乳の生合成と泌乳生理
    • 2.乳の栄養成分の科学
    • 3.牛乳および乳製品の検査法と安全性確保
    • 4.飲用乳と乳製品の製造技術
    • 5.発酵乳(ヨーグルト)の製造技術
    • 6.チーズの製造技術
    • 7.牛乳と発酵乳製品の機能性と健康への寄与
    • 8.牛乳および乳製品に関する法令
    • 9.乳および乳製品の生産と消費
    • 第2章 肉の科学
    • 1.筋細胞と筋肉の構造
    • 2.筋肉の死後変化と死後硬直
    • 3.食肉の栄養成分の科学
    • 4.食肉および食肉製品の安全性と品質の確保
    • 5.食肉と食肉製品(ハム類)の製造技術
    • 6.食肉と食肉製品(ソーセージ類)の製造技術
    • 7.食肉と食肉製品の機能性と健康への寄与
    • 8.食肉生産と消費動向
    • 第3章 卵の科学
    • 1.鶏の産卵生理と卵の構造
    • 2.卵のおいしさの科学
    • 3.卵の栄養成分の科学
    • 4.卵の鮮度と品質評価
    • 5.パック卵と栄養強化卵
    • 6.卵の加工特性
    • 7.加工卵の種類と製造法
    • 8.鶏卵成分の機能性と健康への寄与
    • 9.卵の生産と消費および流通
    • 最近のトピックスと諸問題
    • 乳および乳製品(乳および乳製品と健康、乳へのメラミン混入事件、サカザキ菌と調乳温度、乳アレルギー、トランス型脂肪酸、乳牛の飼料とBSE問題、チーズ製造における発酵生産キモシン)、食肉および加工食品(食肉とBSE問題、口蹄疫、牛肉偽装事件、脱霜降り牛肉と赤肉重視の方向性、クローン牛の牛肉消費の問題、牛肉のトレーサビリティシステム、地域ブランド)、卵および卵加工食品(卵とサルモネラ食中毒、高病原性鳥インフルエンザとその防除対策、卵のコレステロールと心臓病のリスク、卵アレルギーの問題、ピロリ菌ウレアーゼ抗体を使用した機能性ヨーグルト)

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